4月7日から兵庫県立美術館で開催されている「ジブリの大博覧会」に行ってきました。展示内容もさることながら、兵庫限定で実施されたジブリ作品に登場する飛行機に関する記念講演が素晴らしかったので、そのお話です。
兵庫県立美術館へ
ジブリの大博覧会は、2015年の愛・地球博記念公園から巡回が始まり、新潟、東京、長崎、大分、ソウルをまわって兵庫県立美術館にやってきました
なかなかの混雑具合
開館は10時で、私たちが到着したのが10:30頃。入場だけでも20分くらいの待ち時間。ワサワサ人がいます、、
ジブリ展はいつも混んでますね。そして、ファミリー層が多いので賑やかなのも特徴。当日券を買う列も並んでいたので、事前にコンビニなどでチケットを買われることをオススメします。
展示概要
館内は一部を除き、写真撮影はできません。レイアウトはこんな感じ。
公式サイトにもありますが、トトロのバーでは巨大トトロが、宣伝ゾーンでは等身大かと思うようなポニョが迎えてくれます。
糸井重里さんとのFAXがすごい
今回のジブリ展で我が家が一番食いついたのが、映画の宣伝コピーを制作する時、コピーライターの糸井重里さんと、宮崎駿さん、鈴木敏夫がやりとりしていたFAX!
全部手書きなのですが、3人の独特の文字、言葉遣いがとても興味深く、何枚もあるFAXをじっくり全部読んでしまいました。手書きなのに変換ミスとか(笑
たとえば、もののけ姫のコピーは「生きろ」でした。ここに至る経緯はすさまじく、当初はまったく違う案だったようで、宮崎駿さん、鈴木敏夫さんとのやりとりのFAXを読んで、ようやく「生きろ」に辿り着いたことがわかります。もののけ姫イコール生きろ、というイメージがついてしまっているので、当初のコピーを見ると、なんだか???という印象でした。
もちろん、FAXの言葉以外にもたくさんのやりとりがあったはずですが、最終的に3文字に落とし込んだ、この3文字に決めた決意みたいなのが伝わる内容でした。
撮影OKなところも
時々写真撮影OKなところがあり、一つ目がこちら。
ネコバス!中に入って撮影ができます。ちなみに中に入るのは30分待ちくらいでした。さっさと追い出されたのか、ギャン泣きするキッズも。。行き先は「こうべ」になっています。
他の会場では、その土地の名前になってたのかな?
もう一箇所の撮影ポイントが、壮大なモデルのこちら。
ラピュタの世界です。空飛ぶ飛行艇。ゴリアテっぽくもありますが、ちょっと違うかな。常に動いていて、たまに高度を下げてきます。
色褪せた雰囲気が、パズーの家にあった、お父さんが撮影したラピュタの写真や飛行機の写真などの世界を彷彿させますね。
兵庫限定の記念講演
そして、ここ兵庫限定で行われたのが、記念講演「ジブリイベントプロデューサーと飛行機のプロが語るジブリ作品の飛行機達」です。もう、ジブリ大好き、飛行機大好きの私にとっては、何が何でも聞きたい!というタイトル。早起きして整理券をもらって聞いてきました。
朝イチで整理券をもらいに
講演は4月8日限定で、朝11時から整理券が配布されるとのことだったので、10:30くらいには列に並びに行きました。が、予想外に並んでない!張り切って行ったのに先客は15人くらい。。人気ないの?!こんなに楽しそうな講演なのに!とりあえず無事整理券はゲットできました。
お昼を食べに一旦外出して、講演会場がオープンする13:30頃に戻ってきても、まだ整理券を配っていたのですが、実際の会場はほぼ満席で盛況な雰囲気でした。せっかく整理番号が早かったので、そこそこ前方に席を確保してみました。
登壇者ご紹介
今回の講演の登壇者は
渡辺 律さん
(新明和工業株式会社 航空機事業部)
矢部俊男さん
(森ビル株式会社 都市開発本部 総合統括部 メディア企画部)
青木貴之さん
(スタジオジブリ「ジブリの大博覧会」プロデューサー)
ジブリのプロデューサーさんはもちろんですが、飛行機好きなら外せない新明和工業の方など、ワクワクするキャスティングです。
森ビルの矢部さんは、展示の中で飛行機の仕組みについて解説されていて、お祖父さんのお兄さんが戦前新明和工業(当時の川西航空機)で飛行機を開発されていたそうです。そして、すんごい飛行機好きな方なのです。
新明和といえば
新明和工業といえば、前述のとおり戦前の川西航空機ですが、飛行艇や紫電改という戦闘機を作っていたことで有名な会社です。こちらはワシントンDC近郊のスミソニアン博物館の別館、ウドバーハジーセンターに保管されている紫電改の実機です。
説明のパネルにも「Kawanishi」とあります。ウドバーハジーセンターは、歴史的に価値のある飛行機をたくさん見ることができるので、とってもオススメの博物館です。
川西航空機は戦後解体され、現在の新明和工業につながります。また、母体の川西機械は現在のデンソーテンにつながっています。
新明和工業は現在でも飛行機を作っていて、代表的なものは防衛省のUS-2。7機で運用されているそうです。
(新明和工業のWebサイトより)
ちなみに辛坊次郎さんが遭難したとき、助けに行ったのもこの飛行機です。カタログ上では3m程度の波までなら離着水できるとか。
メンテナンスなどで戻ってきた際に、芦屋の沖合でテスト飛行をする様子が見られるそうです。陸から肉眼では見えないかな。。
航空部品では、エアバスのA380やボーイングのB787のものも作っているみたいですね。
気になる講演内容は
講演はジブリの青木さんがファシリテーターになり、森ビルの矢部さんが作られた資料や写真をもとに軽快なトーク、新明和工業の渡辺さんが技術的な解説をする、、という流れでした。
お題は主に紅の豚の飛行機たち。
たとえばポルコは飛行艇で、カーチスは水上飛行機に乗ってるんですね。そんな違い考えたこともなかったです。
ちゃんとメモしてないのですが、飛行艇は船が飛ぶイメージ、水上飛行機は飛行機が水に降りるイメージだそうです(理解が違ってたらすみません)。まあ、紅の豚では、空中戦の後に降りてきて、殴り合いで決着を着けるんですけど。
この時代は、水上飛行機と飛行艇、どちらが良いのか試行錯誤していた時代だったようです。
胴体着水する飛行艇の一種としては、風の谷のナウシカに出てくるペジテのブリックも含まれるとか。というか、ナウシカに出てくる大型機は飛行艇タイプが多そうですね。ガンシップは水上飛行機タイプ?こんな想像をするのも楽しいものです。
質疑応答も真面目に回答
講演の最後には質疑応答コーナーもありました。全部は覚えていないのですが、Q&A式で一部をご紹介。
Q:天空の城ラピュタ内、シータが囚われた城の上で待機しているゴリアテは、なぜ宙に浮いた状態で止まっていられるのですか?
A:(矢部さん、渡辺さん)ゴリアテの内部構造は公開されていませんが、もしヘリウムや水素などが入った飛行船のような作りだったら、宙に浮いた状態で止まっていられると思います。
Q:ハウルの動く城に出てくるフライングカヤックや、天空の城ラピュタのフラップターは実現可能ですか?
A:(矢部さん)生き物が飛ぶしくみとして、15cmを境に虫タイプか鳥タイプに分かれます。フライングカヤックとフラップターは虫タイプの動きなので、難しいかな・・?
Q:宮崎駿さんの映画には飛行機がたくさん出てきますが、監督自身が飛行機に乗って研究されたりするのでしょうか?
A:(青木さん)宮崎監督自身は飛行機に乗ることはあまりありません。実物を見てしまうと、作品がそれに近づいてしまうのかも(というような趣旨の回答)。仕事場も飛行機のモデルがたくさん並んでいる訳でもないです。あくまで仕事場ですからね。けど、宮崎監督は飛行機や戦車の構造や仕組みなどにとても詳しいです。戦争を肯定しているということではなく、昔のドイツとかイタリアで、「なんで、そうなっちゃうかな~」というのとかに興味があったり。風立ちぬに出てきたカプローニの巨大な飛行艇みたいなのです。
Q:紅の豚のラストシーン、ポルコは人間に戻るのでしょうか?
A:(青木さん)私にもわかりません。皆さんの「紅の豚」があると思いますし。私は風立ちぬから宮崎監督と仕事をしていますが、宮崎監督は映画を作りながら展開を考えていく人なので、作っている私たちにも今後どうなるのかがわからないんです。たとえば、千と千尋の神隠しでは釜爺が神様にお湯を送って、その後お湯が流れていくシーンがありますが、流れ出たお湯はどこに行くんだ?と。で、流れたお湯は釜爺のいる場所より低いところに行って、さらにそこに神様がいて、お湯を使うっていう・・。そんな話まで宮崎監督は考えていたみたいです。千と千尋の神隠しは2時間くらいの映画ですが、そんな話まで入れてたら何時間かかるんだ(笑)とか。
質疑応答の中では、ジブリの青木さんがいろいろな劇中の画像を出してくださいました。ゴリアテの話のときに出てきた画像は、アニメ内では最後に爆発していくシーンのもので、なんと爆発した煙や火を削除したゴリアテ本体だけの画像!これは普通は見られない貴重なものでした。
こんな感じで質疑応答にも真面目に答えていただき、ジブリ映画制作の裏話まで聞けて、とても充実した90分間でした。
ジブリの大博覧会、行ってみて
当初は展示だけ見に行く予定にしていましたが、直前にWebサイトで記念講演を知り参加したところ、思いがけず楽しい充実した内容で大満足でした。映画を世に送り出す人たち、飛行機を作って世に送り出す人たちなど、いろんな人の想いや苦労をリアルな言葉で感じることができました。
ジブリ映画は小さいころから大好きで、セリフが言える作品も多いのですが、ますます好きになってしまいました。スタジオジブリが公表している舞台にも、順番に足を運んでみたいと思います。